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『苦渋の覚悟』

『苦渋の覚悟』

この二日間、
美玖は自分より2つも年下のこの二人の新入部員に
翻弄されていた。

”ああ・・もうわからない・・。”

つい十数秒前、
人生を台無しにされたと思い、
怒りのはけを晴らそうと爆発した感情は、
今また、
僅かな希望の光をこの憎んでも憎みきれない
この二人の言葉に頼っている。

”わ・・私・・、
 私・・・どうすれば・・。”

日本バレーボール界の
新たな新星として脚光をあびるスーパー少女も
弱みを握られれば
ただの17歳の少女である。

心細げなその姿は
185cmの恵まれた体躯も小さく見えた。
その様子を伺いながら
勿体つけるように由美が呟いた。

「げほっ・・げほっ・・・
 ああ・・苦しかった・・・はぁ・・・。」

「ほんとっ・・・
 何かって言うと暴力を振るうんだからっ!
 この馬鹿力女っ!」

圭子も由美に相槌を打つようにうそぶいた。

「ご・・ごめんなさい・・。」

謝る必要など無いはずなのだが
気弱担った少女は二人に何度も頭を下げた。

「あ・・あの・・、
 それで・・・ひ・・ひとりだけって・・・?」

恐る恐る美玖は二人に尋ねた。

「あーあ・・・、
 どうしよか、由美・・・?」

「うーん・・・、
 ごめん、私、首痛くて・・・。」

「そうよね・・・私も、
 また、どっかの怪力女に突き飛ばされて・・・。」

美玖の縋るような視線を気付かぬ振りをして
圭子は腰を擦る。

「ご、ごめんなさい、
 本当にごめんなさい・・・。」

由美は呟いた。

「もう本気でWEBに載せてやろうかしら・・・?」

「そ・・そんなっ・・・!
 ご・・ごめんなさい・・・そんなつもりは・・・!」

「赦せないわよね・・・!」

「世界中に日本のバレーボールのスーパーアイドル、
 香坂美玖は超変態女だったって・・・。」

「あはは・・それいいっ!」

二人の会話に嗜虐の色が見え始めたことに
美玖は怯えた。

”ああ・・だめ、
 弱気になったら・・・、
 また昨日の繰り返しになる・・・。
 落ち着いて・・美玖・・落ち着いて・・・。”

美玖は昨日の自分を振り返り、
二人に弱みに付け込まれてしまっていったことを思った。

「そ・・そんなことをしたら、
 ゆっ・・赦さないっ!本当に赦さないからっ!」

自分には力がある・・・
人生を棒に振られたなら怖いものなど無い。

その報復を
二人に仕返すのは当然のことである。
それを脅しに
圭子と由美に画像の処理を迫ろう・・・。

美玖は追い詰められた
自分を奮い立たせて凄んで見せた。

「また暴力に訴えようとするの?」

15歳の少女とは思えない
落ち着いた声で由美は応えた。

「そ・・そうよっ!
 あ・・あんた達がそのつもりなら、
 私・・私だって、覚悟があるわ・・・!」

「ふーっ・・!
 学習能力の無い人ね、ほんと・・・。」

由美は呆れ顔をして
圭子の方を見た。

「ふっ・・筋肉馬鹿だから・・・
 しょうがないわ・・・。」

圭子も由美と視線を交え、
嘲笑の笑みを浮かべた。

「な・・なんですって・・・!」

大人びた二人の様子に
呑まれない様に美玖は二人をにらみつけ
肩をいからせた。

「ふーっ・・!
 全く、学習能力の無い人ね、ほんと。」

「・・・・・・?」

美玖の威嚇に
全く動じない二人に美玖自体が動揺した。
膝が震えるのを必死に堪え、
睨み返した。

「はん、しょうがないわね・・・。」

その視線を覗きあげるように
圭子が語り始めた。

「もう一人って、
 あなた、誰だかわかる・・・?」

「・・・?
 わ・・・わかるわけないじゃないっ!
 そっ・・それがっ!?」

「ここまで言っても判らないの?
 ・・・これだから・・・バレー馬鹿は・・・?」

自分の胸の位置にも足りない
下級生のその言葉に美玖の肩先が震えた。

「なっ・・何ですって!」

いつしか、また握り拳を作っていた。

「きゃー、怖い、
 また暴れられちゃう・・っ!」

怒りの形相を浮かべる美玖に
少しも怖じける様子を見せずに圭子が茶化す。
その姿に美玖は
とうとう拳を奮い上げた。

「いいのっ!?
 私達以外の誰かが
 あんたの超恥ずかしい写真と動画を
 ばら撒くってことっ!」

圭子が美玖の振り上げた拳を見ることなく、
美玖の顔を見つめて言い放った。

「・・・・・?!」

戸惑う美玖に
由美が言い放った。

「あんた、私達がばら撒けば、
 暴力を振るって報復するでしょ?!
 今みたいに・・・!!」

「あ・・当たり前でしょっ!」

「暴力で以って、
 私達を脅そうって
 思ってたんじゃない!?
 大方、それで画像を取り返そうって。」

思惑を言い当てられ、美玖は言葉につまった。

「ふふっ・・わからないっ!?
 あんたの知らない誰かは
 あんたのその暴力を怯えることなく、
 ばら撒けるってこと!」

「・・・・!」

衝撃が美玖の脳髄に貫いた、
同時に振り上げた拳を力なく落とした。

「わかったみたいね・・・。」

圭子が勝利に満ちた顔で
二人に暴力を振るえば、
そのもう一人の誰かが画像をばら撒くことを
得意げに話した。

「誰・・・誰に送ったの?」

「ばーか、教えるわけ無いじゃないっ!
 ほんと馬鹿じゃないのっ?!」

圭子はそういうと由美と目を合わせ
声を立てて笑った。

「ああぁ・・・。」

答えてくれる筈のないことを
美玖は尋ねる前から判っていた。

しかし聞かずには居られなかったのである。
憔悴にくれる
美玖を見つめながら、
不意に笑いを抑えた由美が呟いた。

「お仕置きが必要ね・・・。」

ビクッ・・・!

美玖の大きな身体が震えた。

「スカートを脱ぎなさいっ!」

「・・・・!」

由美の顔を美玖は見つめた。
そこには嘘でも冗談でもない、
威圧の瞳が美玖を捉えていた。

「・・あ・あの・・こ・・ここで?」

「”あの・・”じゃないっ!
 ”はいっ、由美様でしょっ”!」

美玖は絶望の淵に立たされていた。
今は由美たちの命令に従うしかない。

美玖は一瞬、周りの様子を伺った。
幸い、登校時間でもあり、
東校舎の裏庭や、
その向こうに垣間見える町並みにも
人影は見当たらなかった。

美玖は覚悟を決め、
由美の言葉を復唱した。

「・・は・・はい・・、
 由美様・・、スカートを脱ぎます。」

美玖は制服のスカートのフォックを外し、
ファスナーをゆっくりと降ろすのだった。

『苦渋の覚悟』

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

あとがき

美玖ちゃんは
バレーを始める前は
どちらかというと
背が大きなことをコンプレックスにした
おとなしい女の子でした。

気丈な態度をしたとしても
それを砂上の楼閣にも似て
とても脆いのです。

頑張れ、美玖ちゃん。
おじさんは応援しているぞ!


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