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若妻奴隷 坂井幸絵 『智子の三回忌』

『智子の三回忌』

ミイィィンッ・・ミィンミンミンミン・・・
ミイィィィィィイッ・・・!!

夏を惜しむように
忙しない蝉の啼き声が降り注いでいた。

盆供の折には
雨も降り小雨の中をこの路を歩いた。
幾日かそれからも雨が降り続き
このまま夏が終わるのではないかと
錯覚を覚えたこの頃だった。

”明日もこれくらい
 涼しいといいのだけれど・・・”

昨日の午後、
勤め先の哀玩ストアの帰り道
幸絵は今日の午後の
義母智子の三回忌のことを想い
浮かべ天を仰いでいた。

それは自らの避暑の為ではなく、
夫である義春のことを思ってのことである。
去年の今頃はまだ
彼は幸絵も同じ場で遭遇していた
男子高校生の殺人事件によって
鑑別所に抑留されていた。

当然、
智子の葬式にも立ち会えておらず
それを行ったのは
まだ義春と結婚前の幸絵だった。

昨年秋に出所した義春にとって
亡き母の法要に参加するのは
先日の盆供養に引き続き
この三回忌にて二回目である。

「お盆と三回忌のご供養を一緒にしても
 良いのだがね・・・。」

智子の遺骨と
そして先に亡くなっている
義春の父である進の遺骨を移し
葬った先の住職が言ってくれていた。

しかし、義春は
「か・・母ちゃんの・・ほ、法要を
 はっ、省くことなんか出来るかっ!?」

住職の言葉を伝えた時、
義春の怒りと共に思い切り
殴り、蹴られ
腹に受けたボディブローに
のた打ち回った幸絵だった。

幸絵に悪気があったわけではない、
ただ夏のさなか、
山の上の菩提寺まで歩くことに対しての
義春への気遣いであった。

「も・・申し訳ありませんでした。
 ゆ・・幸絵豚が浅はかでございました。」

”ああ・・、
 あの優しかったお義母様のことを
 ないがしろにするなんて・・・っ!
 なんてことを・・・”

腹の痛みに耐えながら
幸絵自身、自分の愚かさを責め、
鼻血や嘔吐に汚れた顔を拭きもせずに
義春に詫びたのは
今月の初めのことである。

そして今日、こうして・・・
礼服に身を包んだ義春と幸絵が
菩提寺へと続くアスファルトの照り返しの
中を歩いていた。

ミイィィンッ・・ミィンミンミンミン・・・
ミイィィィィィイッ・・・!!

ここぞとばかりに求愛の声を上げる蝉しぐれが
暑さを更に感じさせていた。

”大丈夫かしら・・・
 幸絵加虐生殺自在主様・・・?”

sakaiiki01

「はぁはぁはぁはぁ・・あ・・あじぃっ・・・」

長い階段を登り、
義春は汗だくになり息を上げていた。

義春を気遣い、
荷物を全て運んでいるのは
智子の残してくれた礼服に
身を包んでいる幸絵だった。

”ああ・・
 お苦しそう・・・
 ごめんなさい・・・。”

義春が暑さに苦しんでいることを
どうにもすることの出来ない切なさに
心を痛める幸絵だった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あとがき

やっと、
本編(幸絵さんの少女時代)に繋がる話を
書く事ができました。
義春君のお母さんの
智子さんの遺してくれた礼服、
似合ってると私は想います。

現在と絡め
また少しずつ幸絵さんと義春くんのお話を
してまいりたいと想います。
また続けます。

rantione様
ありがとうございます。
幸絵さんのお話は私も好きです。
これからも応援宜しくね。

ふぃがろ

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よろしくお願いします。

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