2011/08/29 若妻奴隷 坂井幸絵 『智子の三回忌』 『智子の三回忌』ミイィィンッ・・ミィンミンミンミン・・・ミイィィィィィイッ・・・!!夏を惜しむように忙しない蝉の啼き声が降り注いでいた。盆供の折には雨も降り小雨の中をこの路を歩いた。幾日かそれからも雨が降り続きこのまま夏が終わるのではないかと錯覚を覚えたこの頃だった。”明日もこれくらい 涼しいといいのだけれど・・・”昨日の午後、勤め先の哀玩ストアの帰り道幸絵は今日の午後の義母智子の三回忌のことを想い浮かべ天を仰いでいた。それは自らの避暑の為ではなく、夫である義春のことを思ってのことである。去年の今頃はまだ彼は幸絵も同じ場で遭遇していた男子高校生の殺人事件によって鑑別所に抑留されていた。当然、智子の葬式にも立ち会えておらずそれを行ったのはまだ義春と結婚前の幸絵だった。昨年秋に出所した義春にとって亡き母の法要に参加するのは先日の盆供養に引き続きこの三回忌にて二回目である。「お盆と三回忌のご供養を一緒にしても 良いのだがね・・・。」智子の遺骨とそして先に亡くなっている義春の父である進の遺骨を移し葬った先の住職が言ってくれていた。しかし、義春は「か・・母ちゃんの・・ほ、法要を はっ、省くことなんか出来るかっ!?」住職の言葉を伝えた時、義春の怒りと共に思い切り殴り、蹴られ腹に受けたボディブローにのた打ち回った幸絵だった。幸絵に悪気があったわけではない、ただ夏のさなか、山の上の菩提寺まで歩くことに対しての義春への気遣いであった。「も・・申し訳ありませんでした。 ゆ・・幸絵豚が浅はかでございました。」”ああ・・、 あの優しかったお義母様のことを ないがしろにするなんて・・・っ! なんてことを・・・”腹の痛みに耐えながら幸絵自身、自分の愚かさを責め、鼻血や嘔吐に汚れた顔を拭きもせずに義春に詫びたのは今月の初めのことである。そして今日、こうして・・・礼服に身を包んだ義春と幸絵が菩提寺へと続くアスファルトの照り返しの中を歩いていた。ミイィィンッ・・ミィンミンミンミン・・・ミイィィィィィイッ・・・!!ここぞとばかりに求愛の声を上げる蝉しぐれが暑さを更に感じさせていた。”大丈夫かしら・・・ 幸絵加虐生殺自在主様・・・?”「はぁはぁはぁはぁ・・あ・・あじぃっ・・・」長い階段を登り、義春は汗だくになり息を上げていた。義春を気遣い、荷物を全て運んでいるのは智子の残してくれた礼服に身を包んでいる幸絵だった。”ああ・・ お苦しそう・・・ ごめんなさい・・・。”義春が暑さに苦しんでいることをどうにもすることの出来ない切なさに心を痛める幸絵だった。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあとがきやっと、本編(幸絵さんの少女時代)に繋がる話を書く事ができました。義春君のお母さんの智子さんの遺してくれた礼服、似合ってると私は想います。現在と絡めまた少しずつ幸絵さんと義春くんのお話をしてまいりたいと想います。また続けます。rantione様ありがとうございます。幸絵さんのお話は私も好きです。これからも応援宜しくね。ふぃがろ
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