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幸絵、智子と義春との別れ

中村工業の新特許製品
SMMD(SuperMicroMotorDevice)は
特許が認定される前から
既に噂は電気工業界から注目を浴びていました。

僅かに寸法0.5mmの大きさで
熱を感じると
振動を始める非金属部品です。

一定の周波数、
ランダム周波数、
如何なる振動も作り出せます。

人工臓器、攪拌器、携帯電話・・・
組み合わせることによっては
駆動機関にもなります。

当然、
大手電気メーカーから
注文が相次ぎました。

高額な特許買取の話もありましたが、
幸雄は頑として
首を縦に振ることはありませんでした。

そのおかげで
会社は急速の規模で大きくなり、
SMMDを使った新製品も
次々と売り出されていきました。

進の一周忌が過ぎた頃、
幸絵たちは住み慣れたアパートを離れました。

幸雄は郊外に大きな家を建てたのです。

当然、
義春と智子はアパートに残ったままです。
幸絵と義春にとっては悲しい別れでした。

それまで幸雄は智子と義春を手厚く
遇していたのですが

「もう義春と遊んではいけないよ・・・。」

引越しの頃を境に
彼らを避けるようになっていったのです。

まだ小学生だった幸絵にも
事故の直前まで一緒にいた父が
進を救うことが出来なかった負い目に苦しんでいることを
感じていました。

”お父さんもきっと辛いんだ・・・。”

時折悔しそうに
空を見上げる幸雄の横顔を見ると
大好きな智子と義春に逢うことを
幸絵は我慢することを思うのでした。

やがて数年が過ぎ、
幸絵も来年は高校受験を控える
年齢を迎えていました。

「行ってきます・・・。」

「おうっ!
 乗ってくか・・・?」

yukie010


「うん・・・
 あ・・いいよ、お父さん、
 高校までの道、覚えたいから・・・
 バスと歩きで行って見るよ・・・く!」

「そうか・・
 じゃ・・・気を付けていけよっ!」

「はいっ・・・!
 お父さんもね!」

「おうっ!」

既に日本でも有数な電機メーカーとなった
中村工業のCEOでも
幸絵にとっては
今も昔も優しい父には変わりません。

バタンッ・・・!

「行ってくる・・・!」

ブロロロロロ・・・

数ある自家用車の中でも
お気に入りの外車に乗り込む幸雄は
幸絵に笑顔を見せて
車を走らせていきました。

「さて、私も行かなくちゃ・・・」

幸絵も受験先の高校に向けて
歩き始めたのでした。

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