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真性マゾ女子高生 斉藤麻紀#7 『嗚咽(おえつ)』

『嗚咽(おえつ)』

お母さんと和解できたのは
 たった一日でしたが、私は幸せでした。
  手紙が破り捨てられたあの日も夜遅くまで
   お母さんの帰宅を待ちましたが、
    逢うことができませんでした。

私は直接逢って
 謝罪したい気持ちに駆られ
  その次の日、朝早く起きて
   お母さんと漸く逢う機会を得ました。   

「あ、あの・・・お母さん、
  ご、ごめんなさいっ!」

テーブルにパンとコーヒーを並べて
 朝食を取っていたお母さんに、
   私は第一声、頭を深々と下げ、詫びました。
    謝ってすむ問題ではないと
     自分でもわかっているのですが、
      そうせざるを得なかったのです。

顔を上げて恐る恐るお母さんの顔を見上げました。

「・・!」

私は声を失いました。
 お母さんの顔はそれまでにも見たことが無い
   怒りと憎しみに満ちていたものになっていたからです。

「あ・・・あの・・・。」

私は立ちすくみながらも
 また声を掛けようとすると、
  すぐにお母さんは立ち上がり、
    食器を台所に持っていきました。

「わ・・・わたし、やります・・・。」

駆け寄り食器に手をつけようとした瞬間、

「きゃっ・・・。」

ドタタッ・・・
 私の身体はお母さんの肘で払われ、
  床に倒れこみました。

カチャカチャ・・・・・ジャー・・・

お母さんはその後、
 何事もなかったかの様に食器を片付けると
  出勤の準備に部屋に戻ってしまいました。

「うぅぅ・・・。」

どうすることも出来ない私は
 床に這ったまま泣き伏せるしかありませんでした。 
  お母さんはそんな私を垣間見ることもなく
   部屋からそのまま玄関に赴き、
    仕事に出かけてしまいました。
     私は自分の部屋の中に閉じこもり
      ベッドに泣き伏せてその日を過ごしました。
        その日も深夜までお母さんの帰りはありませんでした。

それから、私はお母さんとなるべく
 顔を合わさないようにしました。
  お母さんの私を憎む眼差しが怖かったのもありますが、
   私を見ることで疲れて帰ってくるお母さんを
   更に疲れさせたくなかったのです。

お母さんが出かけると、
 私はお母さんの為の食事の支度や掃除をして、
  また部屋の中に引き篭もりました。
   けれど、支度をした食事はいつも残されたままでした。
    残されたそれを翌日自分が食べるようにしました。

”お母さんの食べかけの残飯が食べたい・・・。”

正直そう思いました、
 お母さんのために作った食事が
  そのまま綺麗に残されていることに
   私は深い悲しみを感じていました。

”そうだ・・・お母さんの好きなものを作れば・・・”

聞かされたことはありませんでしたが、
 良く食卓に並ぶ餃子が好きらしいことは判っていました。
  退学5日目にそう思い、冷蔵庫を探りました。
   道具がなかったので
    私は近くのスーパーに買い物に出ました。

”あと・・・枝豆とビール・・・かな?”

お母さんが仕事が終わって
 シャワーを浴びてから
  時々それらを嗜んでいるのを知っていました。
   家に帰ってからその支度をして
    冷蔵庫にしまっておきました。
     そしてテーブルの上に餃子を
      焼いて食べて欲しい旨を記したメモを残しておきました。

”また・・・破られちゃうかな・・・?”

私はその覚悟しつつもそれを用意していました。
 しかしそれは破られませんでした。
  その日、お母さんは意外にも早く帰ってきたのです。 
   私が家事を済ませてお風呂に入ろうとしたときでした。 
  
 ガチャッ・・・

「きゃっ・・・・!」

突然、お風呂場の扉が開かれました。
 そこにはお母さんが立っていました。
  怒りの表情も浮かんでいないお母さんの両手には
   枝豆を入れたお皿とビールがありました。

「お・・・お帰りなさい。・・・お母さん。」

私は恐る恐るお母さんに話しかけました。

「・・・これ、あんた買ってきたの・・・?
  昨夜までなかったよね・・・?」

「あ・・・は・・はい・・・、
  きょ・・今日、スーパーで買ってきました。
   あ、あのお金はちょ・・・貯金で買いましたから・・・。」

曽祖父曾祖母と暮らしていた時に
 貰ったお小遣いを少しづつ貯めたお小遣いで買ったのです。

「ふーん・・・。」

お母さんは微笑みながら頷いてくれました。

”あ・・あ・・喜んで貰えた・・・。”

私がお母さんの笑みに釣られ、
 微笑もうとした瞬間でした。

ガツッ・・・ガシャーン・・・!

「きゃぁっ!」

お皿とビールが
 私の額と肩にぶつけられました。、
  枝豆がお風呂場の床に飛び散り、
   ビール缶は湯船に落ちました。

「・・・ご、ごめんなさいっ!」

私は何がお母さんを怒らせたのかも
 判らぬまま、謝っていました。

「私にこれ以上、
  恥じ欠かせないでよっ!
    学校で裸になって低額になっていること、  
      近所の連中みんな知ってんのよっ!ばかっ!」

お母さんをまた苦しめてしまいました。

「ごめんなさいっ!
  お母さんっ・・・ごめんなさいっ!
    恥をかかせてごめんなさいっ!」

人前に出ていい娘ではありませんでした。
 私はひたすらお母さんに謝り続けました。

「あぁぁっ頭に来るっ!」

ガシャン
 浴室の扉が思い切り閉められました。
  私とお母さんの溝はもう埋まることはないでしょう。

「あ・ああぁ・・・うぅぅ・・・!」
 
”嫌われたくないのに・・・
  いつもいつも私は・・・”

私は浅はかな自分の行為に自己嫌悪し
 お母さんの出て行った扉を
  嗚咽を漏らしながら見つめていました。

嗚咽
oetsu




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