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女牛畜奴栗原香澄#12 『僅かな期待』

『僅かな期待』

香澄はこの小川沿いを河口に向かって歩くことにしました。
 理由は生きていく為に必要な水と食料となる『香りのいい草』が
  この流域に茂っていたからです。
   海に出たら船に潜り込むか、
    小舟を奪いこの女牛市場で振興した界隈から
     離れようと考えたのです。

人の気配がしない林の中とはいえ、
  香澄は用心をして歩きました。
   この界隈で野良女牛がいれば
    すぐに保健所に通報されることを香澄は知っています。

農場主から逃走しても無駄だということを
 刷り込むように何度も言い聞かされていたからです。
  けれども、
   ずっとこのまま、
    ここにじっとしているわけにもいきません。
 
農場主はきっとまだ探し続けているでしょう。
 いつまた農場主に追いつかれるかも知れないのです。
  香澄は樹木の陰に隠れるようにしながら河口へと向かいました。
   3時間も歩くと小川は大河に合流しました。

”知久土川だ・・・。”

香澄はその川がこの流域の一級河川の
 知久土川であることを知り得ていました。
  知久土川は日本海につながっています。
   香澄は遮蔽物が少ない大河沿いに出たことで
    より慎重に歩みを進めました。

それからまた5kmも歩くと
 川幅が拡がり河口が近いことが伺えました。
  香澄は歩く途中、
   川原に落ちていた500ccの空のペットボトルに
    川の水を満たしました。
     海に出ればまた水分を補給することも
      ままならなくなります。

海に着きました。
 周りに船が無いかを見回しました。
  近くには知久土港があり漁船がいることはわかっています。
   しかし漁師に見つかればお仕舞いです。
    保健所に通報されてしまうことを恐れ
     香澄は容易には港に近づけません。

貨物船の荷か自分自身で小舟を見つけて
 海に乗り出すしたいと思っているのですが、
  貨物船は愚か、
   やっと見つけた小舟も
    底に大きな穴が開いていて
     海岸の砂で半分埋もれているだけのものでした。

牛女
hune探し


香澄は海岸を更に歩き続けましたが、
 ついにそれらを見出すことが出来ませんでした。
  途方にくれて海岸に崩れるように
   座り込んでしまいました。

”もう・・・だめかな・・・?”

香澄は波打ち際の砂に”栗原香澄”と指で書きました。

ザッザザ・・・

その文字を波が半分以上を削り取っていきます。
 自分が生きていることを、
  そしてここで朽ち果てるかもしれないことを
    知っている人はいません。
  
思わず、顔を伏せ手で足元の砂を掴みました。
 カッ・・・カリ・・・、

その時、指に何か引っ掛かりました。

”・・・?・・”

美玖はそれを手に掴んで取ってみました。
 それは塩に晒され変色はしていましたが、
  テレフォンカードであることが見て取れました。

”ま・・・まだ、残ってる・・・!”

穴の開いた位置を見るとそこには
 まだ10度数余りが残っていることが目で見て取れました。

”こ・・・これで・・・”

例え、牛の発音しかできないとしても、
 自分の声で両親に訴えれば自分に異常があったことを
  判ってもらえるはず・・・・そうすれば捜索願も・・・・
   香澄はその小さなカードに僅かな期待を掛けたのでした。

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