2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

女牛畜奴 栗原香澄#9「捜索」

女牛畜奴 栗原香澄

『捜索』

幸いにも市場の外にも人の姿はありませんでした。
まだ、香澄を回収に来るはずの業者の車も見当たりません。
辺りの様子を伺いながら哀玩農場のトラックが一台残ったきりの
野辺地を駆け抜けていきます。

「つ・・・つかまえてくれぇっ・・・!」

市場の中から農場主の声が聞こえてきました。
香澄が振り返り見ると
どうやら、腰か足を悪くしたようで市場の出入り口で
這いながら叫んでいる農場主の姿が見えました。
農場主には気の毒なことをしましたが、
香澄にとっては命が掛かっているのです。
捕まってしまったら食肉なる道しか残っていないのです。

”ご・・・ごめんなさい・・・!”

自分をこんな姿にした農場主ではありましたが、
生来の香澄の優しさから身体に支障を期たさせたことに
香澄は心で詫びました。
けれども恐らく農場主は直ぐにトラックに乗って追いかけてくるでしょう。
香澄は重い乳房と鎖を引き摺り野路を駆け続けました。

”このままじゃ、追いつかれちゃう・・・。”

このまま一本道の野路を走り続ければやがてトラックに乗った
農場主に追いつかれてしまいます。
香澄が目指したのは500mほど先にある林でした。
当然そこまでは一面の野原でホルスタイン調に刺青された香澄の姿は
目立ち浮き上がり隠す術はありません。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・・。」

身軽だった女子大生の頃の身体ではありません。
今もこうしている間に大きく膨れ上がった乳房は女牛乳(めうしぢち)を
分泌し続け、乳房を重くしていきます。
上下左右にゆさゆさと揺れる乳房は身体のバランスを悪くし、
乳房の根元は千切れそうに痛み始めます。
香澄は乳房を両手で支えて走り続けました。

”あ・・あと、もう少し・・・”

林の入り口まであと200mほどの距離になりました。

「はっ、はっ、はっ、はっ・・・・。」

咽喉が渇いてひりひりと痛みました。
考えてみれば市場に入る前に
小便検査で自分の尿を飲んでから3時間が経過しています。

”の・・・咽喉、乾いたよぉ・・・・・・”

女牛の水分摂取量は並大抵ではありません。
一日20リットル以上もの女牛乳を作り出す為に
大量の水分が必要となります。
日中は2時間おきに2リットルの水の摂取が日課となっています。
そして昼夜問わず4時間おきに搾乳しないと
乳房が腫れ上がり激痛を伴うようになります。
夜間の水分はその4時間おきの搾乳の際に3リットルの水分を採り、
また翌朝3リットルの水分を以って補います。
女牛の身体を維持管理するためのごく基本的なことが
この水分補給と搾乳です。
独り身の哀玩農場の農場主が自分で香澄を飼うことを諦めた理由が
そこにありました。

”も・・・もう、走れない・・・・”

距離はあと50m程になったのですが、
香澄は足が前に進まなくなっていました。
咽喉の渇きが癒せればと思うのですが、
周りにある水分といえば自分の乳首から滴っている
女牛乳(めうしぢち)しかありません。
けれども香澄はそれを口にすることは出来ても
喉を通すことは出来ません。
なぜならば栄養価も有り美味な女牛乳を
女牛に飲ませない為に女牛改造過程のなかにある工夫が
されているからです。
その工夫とは女牛が女牛乳を飲むと
アレルギー現象をひき起こし、
四肢に激痛が伴う痙攣を起こさせるようになっているのです。

一度、香澄自身、農場主が水分補給を怠った為に
どうしようもない咽喉の渇きを癒す為に
一口だけ自身の女牛乳を口にしました。
我が乳ながらその芳醇な味は今も忘れられません。
忠告も忘れ、自分の乳首を5口6口と吸い上げたその直後でした。
説明を受けた以上の痛み、四肢の関節に火箸を押し付けられた痛みと
共に痙攣が起きたのでした。

”だめ・・・、
 これを呑んだら動けなくなっちゃう・・・。"

香澄はよろよろと歩きながら、
自分の乳首の先端からぽとぽとと溢れ出て来ている
女牛乳を恨めしく見つめました。
今、この時も女牛乳生産を主目的とした女牛の生態は、
身体中の水分を乳房に集め女牛乳を作り出そうとしています。
恐らく大腸内の便の水分はもとより、
膀胱に残った尿も吸い取り始めているはずです。
それが昂じると毒素が身体に回り重症な尿毒症を引き起こし、
女牛乳にも品質上の欠陥が生じます。
市場に入る前に香澄が羞恥に震えながら人前で行った
毎日の小便検査、大便検査はそれらの健康管理と
女牛乳の品質維持の為に必要不可欠な検査となっているのです。
香澄はよろける足を引き摺りながら市場の方を見ました。

”あ・・・あぁ・・・”

哀玩農場のトラックが動き始めたのが遠目にも見えました。

”い・・・行かなくちゃ・・・!”

トラックに見つからないように早く林の中に
逃げ込まなければなりません。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・・!」

再び、香澄はよろけつつも林を目指しました。

「あうぅぅっ・・・!」

ドサササ・・・・・!

林の入り口で足をもつらせ雑木林の中に倒れこみました。

”はぁ、はぁ、も・・もう、だめ・・・、動けない・・・っ”

雑木林に倒れこんだまま、香澄はただ呼吸をするだけで
身体を動かすことが出来ませんでした。

ガガガガ・・・・

砂利道を猛スピードでやってくるトラックの音が近づいてきました。

”はぁっ・・はぁっ・・・だ、駄目・・・見つかっちゃうっ・・・!”

香澄は最後の力を振り絞り、
雑木林の枯れ草の陰に潜り込みました。

ガガガガ・・・・キィッ・・・・!

案の定、トラックが林の入り口で止まりました。
農場主も香澄が林の中に逃げ込んだのと思ったのでしょう。

キィ・・バタンッ・・・!

トラックのドアが開けられ、農場主が降りた気配がしました。

ザッザッザッ・・・・

農場主がこちらに向かってくる足音が聞こえました。

”お・・・お願い・・・気が付かないで・・・!”

香澄は身体中に枯枝による傷を作り、
身を縮ませながらそう祈り続けたのでした。

逃亡
onnnausi


コメント

非公開コメント

プロフィール

ふぃがろ

Author:ふぃがろ
ふぃがろです。
よろしくお願いします。

最新トラックバック

カウンター

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR