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幸絵019『幸絵クリスマスの葛藤 店長の迷走』

「いいんだ、幸絵ちゃん。
 ごめんね。」

室山は幸絵の方を向いて
小さく呟いた。

「・・店長・・・。」

「ごめんね、
 無理なこと言ってしまって・・・。
 大事な約束があるんだよね、
 旦那さんと・・・。」

「え・・・
 は・・はい・・・。」

室山は口元に寂しげに
微笑を浮かべ幸絵に詫びた。

そしてうな垂れていた姿勢を起こし、
幸絵に向かって力強く応えた。

「何とかしてみせるよっ・・・。
 大丈夫、これくらい・・・
 営業やってた時には
 これくらいのこと
 何度もあったしね・・・。」

何度もあったから
東京から戻ることになってしまったことに
室山は気付いていないようだった。

「店長・・・。
 ど・・どなたかに
 手伝っていただいたら・・・。
 あの事情を説明すれば・・・きっと。」
  
店長に対する他の店員たちの
心情については幸絵も判っていた。

しかし、
どうみても、
室山は強がっているようにしか見えなかった。

「だ・・大丈夫さ、
 僕一人で何とかする!!」

室山のプライドが
他の店員に助けを請うことを拒んでいた。

「さ、最後になれば
 半額でも何にでもすれば・・・。」

店長が半ば自棄(やけ)になってきているのが
幸絵にも判った。

「だ・・
だめですっ、店長。
 そんなことしてしまったら・・・。」

「え・・・?」

閉店間近に
数少なくなった本当に売れ残りのケーキを
裁くならともかく・・・

売り初めから
百数十個にも及ぶケーキを半額以下で
売り捌いてしまうようなしまえば
予約の客も腹を立てるだろう

更には
売れ残り特売を宛てにして
来年の予約は激減してしまうことを
幸絵は店長に伝えた。

”そうしたら、
 また、店長の立つ瀬が・・・。”

幸絵はそれを思ったが
それを伝えることは控えた。

「そ・・・そうか、
 ありがとう・・・。
 で・・でも、
 うん、何とかするよ・・・。」

震える指


幸絵が半額、それ以下の特売を
止めた理由を聞くと
室山は一瞬うろたえたが、
また無理に笑顔を浮かべて幸絵に応えた。

「大丈夫、
 な・・何とかするよ・・・。
 幸ちゃんは心配しないでいいよ。」

室山はまた
強がって見せた。

幸絵は
その震えた指先と声に
唇を噛み締めていた。

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あとがき

どうする幸絵ちゃんっ・・・!?
それでも、帰宅する?

ふぃがろ



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