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真性マゾ女子高生齋藤麻紀 『切ない憧れ』

『切ない憧れ』

呼吸をするのでさえ
身体中の力が削がれていく思いがする暑さだった。

制服の下を滲み出る汗が
少女の肌に舐め廻していた。

”急がないと・・・
   遅刻しちゃう・・・。”

そう言い聞かせてはいたが
十数分後には始まる切ない行為に
少女は言い様の無い
遣る瀬無さを感じていた。

”何故、こんなことに・・・?”

足が重い・・・
階段を一段登るたびに
答えが判っている疑問を自らに問い掛けた。

”私が悪い・・・。”

暫くすると
悲しみとも怒りともつかない気持ちを伴い
その疑問が込上げてくる。

少女はある人物と
寺と墓地の裏側に位置する公園で
待ち合わせをしていた。

その人物がどのような人物なのか
老若男女、
素性も全く見ず知らずの人間であった。

昨日の帰り際、
教室で少女はその場所を
クラスメートに伝えられた。
少女はまだその場所に行ったことはない。

山の裏手に位置する公園には
滅多に人も来ない。

殆ど使われていない
錆び付いた遊具が置かれているだけだという、
その雰囲気だけで少女を気鬱にした。

その気持ちを更に追い込むように
依頼者は一つ注文を付けてきていた。

”首輪をしてスカートを降ろして階段を登ってくること。”
という命令だった。

「え・・お寺の階段から・・ですか・・・?!」

少女の名前は齋藤麻紀。
はまだこの知久土町に来てから
日が浅い。

養い親であった曽祖父母が亡くなり、
それまで離れて暮らしていた母と
彼女はここで再び暮らし始めていた。

山の裏手の公園だけでなく、
寺の階段自体、
まだ登ったことは無かった。

だが登下校の際に垣間見る、
寺への階段の長さは遠目ながらも判っていた。

「いやなの・・・!?」

”学校以外で知らない人と
寂しい場所で・・・
  ス・・スカートを外して・・・?”

少女を躊躇させるには
充分な理由だった。

初めての貸し出しマゾ調教・・・。

限られた教室の中で
全裸で居ること自体、全く慣れていない。

寺の階段で幸絵と出逢う一日前の話。

”ど・・どうしよう・・・!?”

麻紀にはクラスメート達と交わした約束があった。
『クラスメート全員の変態マゾ奴隷になる』

ある事情から
それに逆らうことは出来ない。
約束・・・いや命令は絶対なのである。

「い・・いえ、い・・行きます。」

麻紀は慌てて土下座をして
命令を復唱した。

「は・・はい、あゆみ女王様・・・
 変態マゾ奴隷うんこ豚斉藤麻紀、
 明日13時にお寺の公園に
 ・・く・・首輪装着、
 スカートを脱いで・・伺わせて頂きます・・・。」

なかなか交わすことの出来ないクラスメートとの会話、
了解の返事を期待したのだが
頭を上げた時、
クラスメートは既に教室を後にしていた。

昨日のことを思い起こしつつ
山門にたどり着いた麻紀は
鞄から首輪を取り出した。

「ふぅ・・・・。」

首輪を見つめて麻紀は悩んだ、
首輪だけならまだしもスカートも・・・?

長い階段を仰ぎ見ても
人影は見当たらない。

しかしながら、
いつ墓参に訪れた人々と出くわすかもしれない。

もし、首輪をつけながら、
スカートを脱ぎ去った自分を見られたら、
どう思われるだろう・・・?
羞恥心は彼女の頬を真っ赤に染めていた。

”だ・・だめ・・・できない・・・。”

もともと
おとなしく引っ込み思案な少女であったが為に
友達を作れない自体を招いている。

その事態を打開するのが
彼女のもう一つの性格にあった。

「ああ・・き・・来て・・・。
 もっと・・・。」

麻紀は胸の奥にある
羞恥心の向こうにある覚醒を
必死に呼び起そうとしていた。

”ああ・・だめ・・、
 でも時間になっちゃう・・・”

まだ恥ずかしさが勝っていた。
しかし、時間は刻一刻と過ぎていく、
麻紀は階段を登り始めた。

そして給水所までの階段の
中程に至った頃であった。

ダタッ、タッ、タッ・・・タッ

「・・・・?」

フワッ

軽やかな足音共に
麻紀の冷たく湿った頬に一陣の風が吹きつけた。
そして・・・
明るい声が響いた。

「はぁっはぁっ・・・
 こ・・こんにちわっ、
 お墓参り・・ですかっ!?」

「えっ?・・えっ??」

つい先程まで全く人影が無かったのに
突然、礼服に身を包んだ女性が
目の前に立っていたことに
麻紀は驚きの声を上げた。

両手に荷物をいっぱいに持ち、
汗を額に浮かべながらも
満面の笑顔を麻紀に向けていた。

”あ・・ス、スーパーのお姉さん・・!?”

麻紀はその女性を知っていた。

麻紀の家は町境にあり、
どちらかといえば
この女性の勤める哀玩ストアより
大型で品揃えの良い隣町のスーパーの方が近い。

ところが2週間程前、
そのスーパーが修築で3日間の臨時休業になった為、
止むを得ずが彼女の学校の近くにある
哀玩ストアを訪れたのだった。

その時に出逢ったのが
この女性だった。
その為にその日から
食材の買出し先は哀玩ストアに変わっていた。

唯、それは麻紀に限ったことではなく、
その臨時休業で値段は
殆ど変わらない哀玩ストアに
買出し先が変わった客は多かった。

その理由は哀玩ストアの店の雰囲気に有った。

この女性の明るさ愛らしい笑顔の貢献は当然ながら、
彼女に触発された
他の店員達の態度が
店の雰囲気を良くしており、
売り上げは2割程度も増していた。

そんなことを麻紀が知るはずもないが
他のレジよりも多少人が多くても
彼女の列に並ぶ客が多いことには気付いていた。

"スーパーのお姉さん・・・坂井幸絵さん。”

麻紀は女性の名前も知っていた。
その明るさと優しげな微笑で
みんなに愛されている、
天真爛漫な輝きをもっていることに
麻紀は憧れていた。
レジで向かい合う時に名札から知ったのだった。

「いらっしゃいませ!」

憧れの女性・・・坂井幸絵さん

毎日のように通うようになったストアではあったが
幸絵の挨拶に麻紀はぺこりと
頭を下げることくらいしか出来なかった。

”私もこのお姉さんようになりたいな・・。”

レジを待ちながら、
いつも憧れの目で彼女を見ていた。
その彼女が息を弾ませて目の前に立っていた。

「あ・・首輪・・わんちゃんのですか・・?」

語りかける言葉は暖かく、
見つめる瞳は
店で逢う時以上に優しさに溢れていて
美しい宝石のようにさえ思えた。

「あ・・い・・いえ・・・!」

麻紀は咄嗟に首輪を背中に廻し
眼を伏せた。
これから自分が嵌める首輪が
そして自分自身が
とても汚らしい物に思えたからだった。

「・・あ・・ごめんなさい、
 お店でも無いところなのに・・・。」

幸絵は言い淀んだ、
麻紀が気を悪くしたのだと思ったからだった。

「い・・いえっ・・・
 ち・・違いますっ・・・あの、
 わんちゃん、あの・・欲しいなって思ってます・・・。」

「あっ・・・そ、そうなんですか・・・!?
 よかった・・・。」

心配そうだった
幸絵の顔に笑顔が戻った。

「その可愛い首輪が似合う・・・
 似合うわんちゃんが見つかるといいですね・・・。」

「あ・・はい・・・。
 ごめんなさい・・・。
 わ・・私そそかしくって・・・。」

「うふっ・・是非、また
 わんちゃんのお話聞かせてください。
 あ・・ごめんなさい、今日は急用が有って・・・
 また(哀玩ストア)、いらしてくださいね。」

「はっ・・はい・・。
 か・・必ずお話に行きますっ・・・・!!」

幸絵の笑顔を眩しそうに見つめていた
麻紀もいつしか笑顔を浮かべ
精一杯の声を出して挨拶をした。

「はいっ、お待ちしています。」

麻紀の思わぬ大きな声に
幸絵は微笑を漏らし、
再び頭を下げ階段を駆け下りていった。

”・・こんなにいっぱいの
 普通のお話をしたの
 どれくらいぶりだったかな・・・?”

女性の残していった微笑に感動していた。
見つめ続ける女性の後姿が
そして見る見るうちに
小さくなっていくのがとても寂しく思えた。

”も・・もっとお話したいな・・・。”

すると、
50段も下ったところで
幸絵が振り向いたのが見えた。

「はぁ、はぁ、はぁ
 あ・・よろしかったらお名前を・・・
 私、坂井幸絵ですっ・・・。」

”え・・え・・・っ!?”

「あ・・わ、私、変た・・
 さ・・齋藤っ・・
 齋藤麻紀ですっ!」

「斉藤・・麻紀さんっ、可愛らしいお名前、
 これからもよろしくお願いしますっ・・。」

涙が潤んだ。

「は・・はいっ!」

麻紀は大きな声で返事をし
大きく手を振り返した。
手を振ることの出来ない幸絵は
それに気付くとニコリと微笑み頭を下げた。

”私の名前を覚えてくれた・・
  ・・坂井幸絵さん・・・!”

既に知っていた名前だったが、
もう彼女の名前を知っていることを
隠さなくて良いことが嬉しかった。

その嬉しさに
麻紀は珍しく元気良く頭を下げていた。

幸絵は再び微笑み返すと
身を翻し階段を降り始めた。

駆け下りていく姿に
慌てた様子は伺えたが
両手いっぱいの荷物を持ちながら
風を切って走り下る姿は凛々しくも見えた。

”・・・幸絵さん・・・、
 幸絵さん・・幸絵さん・・・。”

麻紀は彼女の名前を心の中で連呼した。

”また、逢いたいな・・・。
 で・・できればお友達に・・・。
 うんん・・・時々お話してくれるだけでも・・・”

階段を降りきり、
山門をくぐる幸絵の姿を見つめながら思った。

”・・・でも・・”

彼女の姿が木陰に隠れると
ゆっくりと背中に廻した首輪を前に戻した。

”きっと・・だめ・・・。
 私のこと・・知ったら・・・・・。”

湧き上がった微かな望みを
赤い首輪が打ち消していた。

憧れの幸絵に出逢ったことが
返って自分に待ち受ける行為の惨めさを引き立たせた。

涙が溢れ出る・・・ああ、どうして・・・?

”こんなに・・こんなに汚れている私が
 素敵な幸絵さんに惹き合うはずも無いよ・・・。”

いつしか頬を涙が伝っていた。

”ああ・・なんで・・・?”

その言葉をまた繰り返していた。

悲しみと切なさは
普通の女性として生きてはいけない絶望を
麻紀に予感させていた。

麻紀の瞳は沈んでいた。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
あとがき
あー長い話、ちかれた。
多感な少女の気持ちが伝わるといいなー。

Badさんへ
ありがとうっ!
あれはあれで恥ずかしい処理の仕方のように思えました。
羞恥プレイですね。。。
また、よろしくね。

ふぃがろ

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