2010/04/25 肉体改造奴隷SlaveButterfly#14『解脱』 『解脱』真の暗闇の中に封じ込められた私。既に与えられてきた食事の回数も記憶に残っていません。光の全く無い狭いゲージの中で何度も解放を願い入り口のドアを蹴ることもなくなりました。何時間かおきに食事が与えられ自らの排泄物の匂いも今は気にならなくなってしまっています。だからといってそれ以外全くの無の空間になったわけでは有りません時折ドアの向こうから声が響いてくるのです・・・”真のマゾになれ・・・ お前の存在価値はそこにある・・・。”「なにそれっ! わからない・・・出してっ 出してよっ!」思いもかけず長い時間をこの空間で過ごすことを悟った時私はその声に逆らい叫んでいました時が経つにつれその声に対しても私は無反応になりましたけれども外界からの刺激がそれだけになった私の思考は私の意志とは無関係にだんだんとその言葉だけに埋め尽くされていきました”わ・・私、 せ・・洗脳されていく・・・ 怖い・・・・怖いっ!”自分が自分で無くなる恐怖を感じました・・・「わ・・私っ・・・負けないからっ! そんな思惑に屈するわけないじゃないっ・・・!」「ね・・お・・・お願い・・・ 何でもします・・・だ・・出してください・・・。 お願いします・・・!」「あははははは・・・ きゃははは・・・・ うふふっふ・・・きゃははは・・・!」「あ・・ありがとうございます・・・。 ご主人様・・・このままずっとここにおります。」「うあぁぁぁうえぇぇん・・・・!」「あんた馬鹿じゃない・・・ こんなことでしか女を相手に出来ないんだ・・・・。」「ぎゃぁあっぁぁあぁっっ・・・・!」何秒、何分、何時間・・・叫んだことでしょう何日・・・何週間・・・何ヶ月・・・いろんなことを暗闇の中から外に語りかけ叫んでいたか判りません・・・けれど返ってくるのはいつもの言葉だけ・・・記憶を失っていることなど既にそれすらも忘れていましたいつしかまた私はその言葉を聴いても声を発することはなくなっていました・・・自ら精神の崩壊を望みもしましたが出来ませんでした・・・真のマゾ・・・それが存在価値・・・私はいつしか以前のように拒むことなくその言葉を考えるようになっていました・・・”真のマゾになれ・・・ お前の存在価値はそこにある・・・。”小さな空間で動きを封じられ漆黒の闇の中息をして食事をし排泄しているだけの私”ここにこうしていることが 私の存在価値・・・?”自らの精神を崩壊させてしまうことが出来ない私の心がとった詭弁だったかもしれませんけれど唯じっとしていることの価値・・・私はいつしかシジフォスの岩を心に想い描いていました・・・”真のマゾになれ・・・ お前の存在価値はそこにある・・・。”「・・・はい、その通りです・・・。 ・・・ありがとうございます。」私自身、驚くほど心が落ち着いた状態で返事が出来るようになっていました。それからまたどれくらい時間が経ったのでしょう私の心は乱れてはいませんでしたここにこうしていることが受虐出来る価値として自分に見出せていたからです”真のマゾになれ・・・ お前の存在価値はそこにある・・・。”「・・・はい、その通りです・・・。 ・・・ありがとうございます。」この言葉のやり取りが何回行われたかそれもまた判らなくなってきていたある日変化が訪れましたガチャ・・・・カチャカチャ・・・・キィィィ・・・・”え・・・っ!?”壁だと思っていた頭側の壁が音を立てて開いていきました眩しい光が流れて込んできて私は思わず目を覆いました。「だいじょうぶか・・・? 瞼は閉じていたほうがいい・・・。」「は・・・はい・・・。」何が起きたか私は判りませんでした。もうこの壁の檻の中で一生を過ごしてもいいと考えていました。「ゆっくり出て来い・・・、 ゆっくりな・・・。」「・・はい・・・。」私は目を閉じたままゆっくりと外に出ようとしました・・・「・・・・! うぅぅっ・・・・」身体中の関節と筋が悲鳴をあげました。余りにも長い間伸ばすことなく固定されていたからです「ほらっ・・・ゆっくりとだ・・・。」「・・うぅ・・はいっ・・・」私はやっとの思いで庭に這い出しましたそうして瞼の向こうの光も落ち着いてきていたことを感じていました「あの・・・ 目を開けていいですか・・・?」「あ・・ああ・・ 新月の夜を選んだんだけどな・・・。」ゆっくりと瞼を開いていきました。「そうだ・・・ 身体洗い流さなきゃな・・・・。」ご主人様はそう言われて走り去られていく足音を響かせました「あ・・・ あ・・待って・・・ 待ってください・・・・・。」あぁぁ・・・思わず足音の先を見るとそこには家に面した湖が広がっていました満天の星がそして遥か向こうの街の灯が光から遠のいていた私の瞳を震わせました春の終わりを思わせる靄が私の汚れた身体を包んでいましたあ・・どこ・・・どこですか・・・既に消えた記憶の向こうにいた男性は今私の大切な人となっています瞬く淡い光は私の瞳を震わせます擦る瞼に涙が溢れて止まりませんでしたどこにいるの・・・身体中の筋を軋ませながら精一杯に身体を起こしあげ霞む視界の先を追いました記憶の柵(しがらみ)から解脱したと思われた私の心はいま愛しき後姿を追い続けていました
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